第20章 驚出
何しとんねんこいつ…ふざけんな、見よう見真似でやれる芸当やない。
目の前の12号は僕と同じ、抜討術の構えをしていた。僕の積み上げてきたもんを、今、この一瞬でやろうとされんのは…心底腹が立つ。
「防御だ、ホシナ!!」
10号の声ですぐに刀と鞘を身体の前で構える。すぐに再生した12号の腕が刀を持ち、すぐさま抜刀してきた。
僕はガキの頃のクソみたいな記憶を思い出していた。何本やっても兄貴に及ばない僕。幾ら「もう1本や!」言うても、兄貴は目の前で舌を出して、「稽古して出直してこい、"雑魚四郎"」と煽る。
ずっと、これだけを握ってきた。ガキの頃から死に物狂いで磨いてきた技や。物真似に負けてたまるか。
防御で折れた刀、吹き飛ばされた僕の身体。身体中が痛い。顔に出来た無数の切り傷、それは身体も同じ。骨も何本か折れとるやろう。
そやけど、これは…これだけは――
「負けられんのや――…」
目の前で刀を振り翳した12号の姿を見て、頭に浮かんだのは――朝霧澪という一人の女だった。