第20章 驚出
何度も何度も貫き、撃ち抜く。小隊のみんなも疲れが見えてきた。それどころか、負傷者までいる。幸いにも、ここにいる怪獣の数はもう、片手で数えられる程だ。
通信機から聞こえてきた情報は、絶望的なものだった。識別番号がつく大怪獣が5体現れた。きこるん、第1部隊の鳴海隊長、第1部隊の小隊長たち、亜白隊長、そして――宗四郎の目の前に。
「澪ちゃ……朝霧隊員!付近にフォルティチュード――7.7の反応!……どうしよう、応援呼べないよ…」
7.7……今ここにそこまでの怪獣を討伐出来る人はいない。それよりも、みんな疲弊している。
「……私がやります、私がやるしかないんです。朝霧澪、怪獣を殲滅します!」
訓練の時よりも、今この瞬間よりも強くならなきゃいけない。じゃないと、倒せない。顎に垂れた血を銃を持った左手の甲で拭い、小此木さんから聞いた出現場所を睨みつける。
次の瞬間、地面から黒い球体が勢い良く飛び出してきた。直径2mくらいはあるだろうか…黒く光る何か――宙を舞ったその何かは開き、地面に着地する。ダンゴムシ…本当になんで…怪獣は虫が多いのっ!
「澪、戦いながら聞いてや。せやけど――一生忘れんで欲しい」
いきなり聞こえてきた宗四郎の声。すごく静かで真面目で…緊張しているような声。宗四郎だって怪獣12号と戦っているだろうに…私よりも大変なはずだ。
「どうしたの?」
副隊長ではなく、宗四郎として話しかけてきているのだと気付き、いつも通り聞いてみる。
ダンゴムシとは未だに睨めっこをしていた。その複眼はほとんど見えていないだろう。
「僕は、死ぬ気で君を――想っとる…!」
「っ!……私も!私もだよ、宗四郎!」
絶対に忘れない。今、宗四郎がどんな思いで言っているのか、脅威を目の前にした私はわかっている。私はここで宗四郎を守るから、宗四郎はそっちで私を守って…そして、この国を怪獣には渡さない。
早くなった鼓動を治めるように深呼吸をし、ノイズを発しながら途切れた通信に、愛しさが溢れ出す。
愛しい人とこれからも一緒に生きていく為に、武器を固く握り締め、高く空へと飛び上がった。