第20章 驚出
大画面のモニターを見ると、東京中の至るところから通報がある。これは……。
「怪獣9号……!」
「来たな…怪獣退治や!」
急いでスーツに着替え、ヘリに乗り込む。宗四郎は調布飛行場へ。私は記念公園へと降り立った。立川基地の目と鼻の先、ここが私の戦場となる。部隊には隊長や副隊長はもちろん、小隊長までいない。
専用武器を与えられた私が、この部隊を率いる。入隊1年目の私に務まるかわからないが、やるしかないのだ。先輩たち十数名に指示を飛ばす。
「標的確認。ここを全力で守り切ります!負傷者の保護を最優先で――怪獣を討伐します!」
草花が咲き誇る中、その命を踏みにじる者たちを殲滅する。私たちの後ろにはいつだって、守るべき命たちがいる。死にたくない――なんて、言えるものか。命を守るにはそれ相応のものが必要だろう。
「澪、聞こえるか?僕や。ひとつ、言わせてくれ。僕は――君の涙はもらわへん。僕の涙もあげへん。勝つで!」
"「涙あげたら、本当に怪獣に負けたみたいだから…負けてないもん、お父さんとお母さんは…負けてないもん!」"
あの日言った言葉を思い出した。
直接、鼓膜を震わす、通信機からの宗四郎の言葉。サーブルを握る右手に力を込めた。死にたくない、じゃなくて…"死なない"。生きて、みんなを守る。
これが終わったら、「指輪欲しい」とか言ってみようかな…宗四郎は笑って受け入れてくれるかな?亜白隊長から渡された指輪はもうない。
そうやって、少し先の未来のことを考えていた。守るべきものが増えれば増える程、力が湧いてくる。もう、何も失いたくないから…大切な命を散らせたくないから。
「了!」
プツンッ…と通信が切れたと同時に走り出した。目の前の脅威を取り除く。誰かの命を奪う災害を減らす為、花の香りが漂う中を駆け抜けた。