第19章 美命
立川基地での訓練に戻り、ナンバーズ10を着用した宗四郎の訓練をオペレーションルームから見ていた。宗四郎は私が見ていることを知らない。初めてちゃんと、ナンバーズの訓練を見る。
「小此木さん、副隊長の解放戦力って…」
「プロトタイプだからねぇ…あの様子じゃ、まだまだ実戦運用は出来ない。たぶん、ノーマルスーツの方が強いよ」
解放戦力だけで言えば、ノーマルスーツには遠く及ばない。9号が仕掛けてくるまでに間に合えばいいのだけど…さすがにあの喋るスーツと息が合わないんじゃ、どうしようもないか。
尻尾を床に刺した10号のせいで、宗四郎は尻餅をついた。どうやら、いつもあの調子らしく、一部のオペレーターからは、漫才スーツと呼ばれているらしい。確かに見ていて飽きないけど…怪獣兵器なのだから、ちゃんとして欲しい。
「ホシナ!お前、交尾したいのか!いつも訓練中、考えてるな」
なんの話…宗四郎は頭を抱えて溜め息をついた。
「っるさいわ、ボケ…いちいち言わんでええ……ちゅーか、交尾やないわ。セックスや。」
何が違うのか…周りのオペレーターたちは何も聞いていないと、平静を装って作業を続けている。小此木さんにいつもあんな感じなのかと聞いてみると、頷いた。
通信機で宗四郎とコンタクトを取る。声をかけるとどないした?と、今の会話をまさか聞いているとは思っていないらしい。
「10号にも言っといてください。オペレーターたちが聞いているので、セクハラです。副隊長がそんなことして、どうするんですか」
「叱られてもうた…って、澪、オペレーションルームおるん?」
はいと答えれば焦り出して、聞かんかったことにしといて、と…。
「ふふ…じゃあもう、ダメですよ?」
宗四郎が返事をする前に、けたたましい警報音が基地内に響いた。