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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第4章 指令


顔を洗ったりしてから朝食を作り始める。

「ほんまにええん?僕が作らんくて…」

「はい、副隊長は珈琲でも淹れて優雅に飲んでてください」

副隊長は珈琲が好きだ、モンブランと合わせて飲むのも好き。伊達に何年も想い続けながら傍にいたわけじゃない。彼の好きな物はしっかりと把握している。

「優雅にて…見惚れて失敗せんでな?」

しませんよと軽く返してパンをトースターに入れた。フライパンを取り出してベーコンを敷き、その上に卵を割り入れる。

洋風だけどいいよね?副隊長、珈琲飲むし。

パンや卵などが焼けるのを待ちながら、珈琲を淹れる副隊長に目線を移した。穏やかな顔をして、挽いた豆にお湯を回しながら注ぐ。珈琲の香ばしい香りが部屋に充満した。

…だけじゃなかった。慌ててフライパンを確認すると、ベーコンが焦げていた。やらかしてしまった…昨日の夕食はちゃんと出来たのに…。副隊長の前で失敗したくなかったな。

「なんや、珈琲とはちゃう、香ばしい匂いがするなぁ?」

「……すみません、焦げちゃいました」

珈琲を淹れ終わった副隊長は笑いながらこちらに来て、フライパンの中身を覗く。

「言うた傍から…ほんま、君は飽きへんなぁ。まあ…こんくらい、食える食える。なんも失敗やあらへん」

朗らかに笑い、頭を撫でてくれる。ベーコンは焦げたくらいが美味い、と笑って戻っていった。日々の小さな優しさが積み重なって、どんどん私の気持ちを膨れ上がらせていっているのを知らないくせに…。
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