第19章 美命
結局、あのまま抱かれて、急いでご飯を食べてから家を出た。危うく遅刻するところだったよ…次からは煽るのも変なことを言うのも控えよう。あんなにされるとは思わなかった。
第二台場での訓練は毎日厳しいもの。さすがに寝不足はきつい。でも、昨日の喧嘩を昨日の内で終わらせられて、本当によかった。
"私の命は宗四郎の一部"…"宗四郎の命は私の一部"…昨日の宗四郎の言葉を思い出す。一部って…私たちはひとつってことだよね?ひとつだから、離れることはない。
「ちょ…アホ!!あ…!」
「っ!ゔっ…!……痛い…」
気付いたら、宗四郎の拳が目の前に迫ってきていて、避けることが出来ずに、顔面で受け止める。やってしまった…怒られる。
「訓練中に考え事すな!最悪や…澪の顔、殴ってもうた……可愛ええ顔、殴ってもうた…!」
可愛い顔…いや、別に顔を殴ったことは気にしなくていいと思うんだけど…私が悪いし、訓練だし…そういう職業だし。
鼻を押さえながら慌てて起き上がり、謝って大丈夫だと伝える。鼻を押さえた腕を取られ、まじまじと見つめられる。すると、つーっの何かが零れた。鼻の下を指で拭い、零れた物を見た。
「すみません…あの、大丈夫です……見えてます…」
インナーの裾を引っ張り、鼻血を拭いてくれる。宗四郎のインナーに血がついたり、このくらい大丈夫というよりも、その美しい腹筋が周りに見えてることが気になった。
周りが私たちに注目しているので、必死に宗四郎の腹筋を手で隠すけど、あまり意味はなかった。見ないで欲しい…宗四郎がかっこいいところ全部、誰の目にも映させたくない。