第19章 美命
誰だろう…嫉妬が渦巻き、午後のあの光景を思い出してしまう。アヤ、だろうか…でも宗四郎は連絡先を消したはず。
リビングの扉の前で肩に掛けたタオルを握った。
「おん、やから…落ち着いたら、また澪連れてくわ。今度は本物やで〜、嫁いびりとかなしやからな?」
扉のガラスから宗四郎がスマホを置いたのを見た。今のって…?本物?嫁?私を連れていくとか言っていたし、私のこと…だよね?
「澪〜盗み聞きはよくないで〜。はよおいで」
さすが副隊長…としか言う他ない。息を殺して聞いていたにも関わらず、バレていたなんて。大人しく扉を開けてリビングに入る。
ソファまでいくと、顔を上げて見上げてくる。そのまま手が伸びてきて、毛先に触れた。クルクルと巻き付けたりして弄び、こっちやと足を開いてソファをポンポンと叩く。
宗四郎の前に行き、膝の間で縮こまるように床に腰を下ろす。肩に掛けていたタオルがふわっと頬をなでていった。
「髪、ちゃんと乾かさなあかんやん」
優しくタオルで包み込み、柔らかく指で髪を撫でられる。気持ち良くて、顎を上げて目を閉じた。やっぱり、宗四郎に触られると落ち着く。
「わっ!な、なに…?」
いきなり顔にタオルを掛けられて、顎を掴まれる。上を向かせられ、唇辺りに何か触れた感覚がした。そのまま黙っていると宗四郎は、おやすみと言って寝室に行ってしまった。