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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第19章 美命


コンビニに寄って家に帰ってくると、明かりはついていなかった。帰るって言ってたのに、帰ってなかったんだ。

すぐに手を洗い、ご飯の準備をする。帰ってきたら謝ろう…そう決意しながら、愛しい人の為に心を込めて料理をする。この時間が好きだった。

ご飯を作り終わっても帰って来なくて、もういいやと、コンビニで買ってきた物を冷蔵庫から取り出して、ソファに座った。蓋を開けてフォークを刺す。宗四郎が大好きなモンブラン。

宗四郎に笑って欲しくて買ってきたモンブランは、涙に濡れる。私と一緒にいたくないのかな…些細なことで嫉妬して問い詰める私なんかと…。甘いはずのモンブランがしょっぱかった。

ガチャ…と音が聞こえて、左手にモンブラン、右手にフォークを持ったまま玄関に急ぐ。必死に手の甲で涙を拭いながら…宗四郎に笑顔を見せたい。

「おかえりなさい!」

「……ん、ただいま」

ご飯を食べていないようなので、急いで準備をする。宗四郎はコンビニの袋を持ったまま冷蔵庫に向かった。

「それ…一人で食うんか?僕は2個買ってきたんに……」

「え?あ…違う。本当は宗四郎に食べて欲しくて……ごめんなさい。もう嫉妬しないから…」

プリンを2つ手に持った宗四郎が、ふっ…と笑った。

「嫉妬されて悪い気はせぇへんけどな。やけど、あない食い下がられると、信じてもらえてへん気ぃする」

僕も悪かったと、プリンを冷蔵庫に入れた宗四郎は、ソファへと向かった。仲直りしたような気がしたけど、出来ていないような感じがした。
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