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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第19章 美命


「なに話してたの」

「やから、ただの業務連絡やって言うとるやろ。お前、嫉妬で疑うんも大概にせぇよ」

「笑ってた!」

「笑うくらいするやろ。僕のことなんやと思うとるん。業務連絡で女と話すんもあかんのか」

そういうわけじゃないけど…だってあの"アヤ"と話してたんだ、気になっても仕方ない。

午後の休憩中、宗四郎はアヤと話していた。笑っていた。アヤが宗四郎に触れていた。わかってる、信じてる。でも、嫉妬で胸がザワついて止まらない。

お昼まではあんなに幸せだったのに…はよ帰るでと背中を向ける宗四郎を追いかけることが出来なかった。やっぱり私はまだ、心は幼い。割り切ることが出来ない。

中庭に来て、膝を抱えながら蹲る。涙は勝手に溢れてきて、謝らなきゃと思うのに、動けなかった。もうあの人が裏切ることはないとわかっているのに。

空が宗四郎の髪の色に染まっていく。ライトに照らされ、私がひとりぼっちなのを強調していた。夜空を眺めながら寂しくなって、あの色に包まれたくなる。冷たい夜空じゃなくて、温かいあの人に。

「お前……」

久しぶりにそう呼ばれたな…宗四郎と澪として話してたのに、上司と部下のようだった。相当怒っていたのだと思い、トボトボと帰路を辿った。
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