第19章 美命
食べ終わると、昼寝しよやと抱き枕のように後ろから抱き締められて、慌てて離れる。演技の時と変わらない距離なのに、あの頃とは何か違くて、羞恥心が頭の大半を占める。
「見られるの、恥ずかしい…」
「見せとったやん、なんで?」
わからないと言うしかなかった。それでも嬉しかった。ずっと好きだった人が好きだと言って抱き締めてくれる。この幸せが失くなった時、私はどうなるのだろう?
考えるのはやめた。失くなることなんてない。失くならせない。この幸せを優しく包み込んで、永遠に残したい。
「えっちなことはしてへんのやから……嬉しないん?」
心臓の辺りに手を当てられて、バレているのだとわかった。その手にはきっと、嬉しいと弾む私の鼓動が伝わっているのだろう。
「嬉しい…」
「せやろ」
午後の訓練が始まるまで私たちは、そのままうたた寝をしていた。