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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第19章 美命


弁当を手に屋上へ向かう。弁当を二つ持たせられて、未だに宗四郎の腕の上。自分から抱っこと言っておきながら、ずっと抱えられているのは恥ずかしすぎてどうしようもなかった。

「宗四郎も休まないと…降ろして…」

「ついたら降ろすで〜」

ぷしゅ〜と音が鳴りそうな程、顔を熱くして俯く。どうか、これ以上、誰かに会いませんように…。

屋上の扉の前で開けてと言われ、ドアノブを回して押すとそのまま入っていく。だが、人がいるのを見て、宗四郎の肩に顔を埋めた。誰かは確認出来なかった。

「あ、亜白隊長とカフカやないですか。僕ら、別んとこ行きます。お邪魔しました」

まさか、あの二人だとは…こんなところを見られるなんて…日比野さんに関しては、ずっとこんなところしか見られていない気がする。

「ここで食べればいいんじゃないか?」

「いえ、二人きりやないと、澪がイチャイチャしてくれへんのですわ」

イチャイチャ…もう充分してると思う。亜白隊長がそうかと答えたので、宗四郎は屋上を出ていく。何故、亜白隊長は疑問に思わないんだ…まだちゃんと話していないのに。もしかして、宗四郎が話したのだろうか。

外に出て、中庭で降ろされる。えっと…他の隊員がいっぱいいる。イチャイチャはしないというわけか。よかった…。

「澪、こっち向いて」

「ん?なに……っ、ちょっと!」

宗四郎の方を向くと、一瞬だけ唇が触れた。油断していた。すぐに離れて弁当を開ける。宗四郎の方は向かずに、黙々とご飯を食べた。
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