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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第4章 指令


少し経つと、お腹の上に乗っていた手は腰を掴み、足も使ってホールドされてしまった。そのせいで余計近付いてきて、副隊長の唇が頬に触れそう…軽く息がかかる。

その感覚に耐えられずにまた顔を背けたが、今度は耳に息がかかって声が漏れそうになったので、慌てて戻した。

「寝れない…」

ずっと緊張していて、吐く息が震えている。

「…触りたい」

「え?」

思わず驚いて彼の方を向くと唇が触れてしまって、慌てて上を向く。

今、どこに触れた…?柔らかくて生暖かったような…想像したものを振り払った。どうしよう、寝てる副隊長にしちゃったかもしれない。

腰を掴んでいた手が脇腹を撫でながら上がってきて、胸に触れそうな位置で止まる。なにこれ…なんかの拷問ですか?

「どこ……て、ほし…」

ん?今のは寝言?恐らくまだ完全には寝ていなくて、寝惚けてるだけのような感じはするが、彼の唇から紡がれる言葉が私を締め付ける。

恐らく今、「どこ触って欲しい?」って言ってた気がする。誰とのことを思い出しているんだろう…今あなたが触れているのは私ですよ。

私に触れながら他の誰かを思い出すなんて許さない。そう思っても何も言うことも出来ず、何もすることも出来ず、ただただ、愛しい人の腕の中で固まっていた。
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