第18章 愛縛 〜縛愛〜
後部座席に乗るとなんでやねんと言われた。何が?首を傾げながら何?と聞いて、シートベルトをする。
「隣が良かったんに…」
小声で拗ねないでもろて…宗四郎を無視して日比野さんに話しかける。
「そうだ日比野さん。私たち偽装結婚なのは聞きました?」
私から連絡をしても良かったのだが、私が伝えるのであれば直接伝えたかった。市川くんとかから聞いてるのかな…もしかしたらきこるんに連絡がいって聞いてるかも。
日比野さんはえ…と固まっている。知らなかったようだ。なら、きこるんも知らないのかな。
「偽装結婚っちゅー名目で事実婚したんやけど、今はもう偽装するんもやめたわ。保科澪になるから…覚えとき」
「保科澪です!」
まだやろ!とツッコミを入れられてしょぼんと俯く。いつそうしてくれるの…早くなりたいんだけど。そんな気持ちは今は黙っておく。
「あ、澪、中之島や。適当にあしらっとって」
仕事用のスマホを渡されて焦る。副隊長のスマホなんて触っていいものじゃない。仕方なく受け取り、通話ボタンをタップする。…ってなにしてるんだ。
というか、宗四郎が話せばいいのに…そう思いながらスマホを耳に当てる。
「あ、中之島小隊長、急ぎじゃなければチャット送っといてくれませんか?副隊長、運転中で…」
中之島小隊長は了解と言いながら通話を切る。宗四郎に渡そうとすれば、持っといてと言われて、落とさないようにしなきゃと抱えた。