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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第18章 愛縛 〜縛愛〜


宗四郎に怒鳴られながら訓練を終えると執務室まで来て、今度はドロドロと蜂蜜のように甘い宗四郎のターン。

「澪…キスもセックスも、好きも…何もかも、今まで本気で君としてきた。偽りだったものなんて、なんもあらへん。苦しめとったのもわかっとる。ごめんな」

宗四郎の椅子に座っていると、膝の上に縋るように腕を乗せて見上げてくる。見つめ返していると扉の方から音が聞こえ、すぐにそちらを向いた。

あかりん?どうしたのだろう…執務室まで来るなんて…宗四郎もあかりんの姿を確認したが、すぐに私に向き直って、膝の上で蹲る。その髪を撫でてあかりんに話しかけた。

「どうしたの?宗四郎に用?」

「いや、澪さんに……これ…」

こちらまで来て、落ちてたと何かを差し出してくる。あかりんの手の平に乗っているものは…指輪だった。え、つけてなかったっけ?訓練が終わってすぐはめたと思っていた物は、薬指になかった。

ありがとうと受け取ると宗四郎に睨まれた。亜白隊長からもらった大事な物だろうと…。それはわかっているんだけども…落としてしまったのは仕方ない。

「全部片付いたら、僕があげる。それは落とさんでな?」

左手を取られて、薬指を噛まれた。あかりんの前で何をしてるんだろう。

「二人って……本当に想い合ってるんですか?この前…」

「あぁ、澪は誰にも渡さん」

あかりんは偽装結婚のことを知ってる。それで気になったんだろう。先程の宗四郎の言葉も聞いてたはず…私たちがどこまでしてるか知られてしまった。途端に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。

あかりんが私によかったねと笑って去っていった。よかったねってなんだ…まさか、あかりんにも私の気持ち、バレてた?伊春くんだけだと思ってたんだが…。

受け取った指輪をはめた。偽りの中で縋る物だったのに、今はこれも偽りの一部でしかないと思えるようになった。いつか本物を貰える日を夢見た。
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