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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第4章 指令


「やから、君が先入り言うとるやろ」

どっちが先にお風呂に入るか問題で揉めていた。副隊長の家なのだからと食い下がるが、副隊長も引く気はないようだ。

「ほな、一緒入ろか?」

「…誰が誰とですか?」

「君が僕とに決まっとるやろアホ」

慌てて先に入りますと脱衣所に向かう。一緒なんて、何を言ってるのだ…と思ったが、リビングの扉を開けて顔だけをそろりと覗かせた。

「副隊長がどうしてもと言うなら、一緒でもいいですよ…」

はよ入ってこいと一蹴された。急いでお風呂に入って、お湯に少し浸かっていつもより早めに出る。副隊長が待っているから、出来るだけ早く済ませた。

その後は副隊長がお風呂に入っている間にキッチンを使わせてもらい、夕食を作っていく。冷蔵庫には意外にもしっかり食材が入っていたので、それを使ってご飯作った。

あまり家に帰れてなさそうだけど、冷蔵庫の中身はいつ補充したんだろう…。

「何作うてるん?」

お風呂から上がってきた副隊長が私の隣に来て腰を軽く抱きながら、私の手元を覗き込んでくる。
あれ…この人こんなに距離近かったっけ…元々近かったけど、こんなに触れることはなかったはずなんだけど。

冷蔵庫にあったえのきと豚肉を使って、肉巻きにして焼いている。手が震えてフライパンに当たって落ちてしまったり、箸を落としてしまったりしたらどうするつもりなんだろう…。

「朝霧、さ…僕のこと好きなん?」

私の様子を見てそう思ってしまったようだ。顔の赤さ、耳まで赤くなってる様子、手が震えて心臓の音まで伝わってしまっているだろう。

「な、慣れていないだけですっ!」

そうかと離れていき、ソファに座ってテレビを見たりスマホを弄ったりしていた。
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