第4章 指令
チラチラと見てくる女性たちを横目に副隊長の家につくと、部屋の中を案内してくれる。初めて副隊長の家に来たので、入った瞬間、噎せそうになる程の彼の匂いに心臓は未だに早鐘を打つばかり。
「シャワーの使い方はわかるよな。とりあえず沸かそか」
見ててと言ってお風呂を沸かし始める彼を見ていた。沸かし方は覚えたと思う。ずっと基地にいたから普通の家のことをあまり覚えていない。
ふと、考えてしまう…私は約10年間もこの人を想い続けていたのかと。この気持ちに気付いたのは再会してからだけど、彼のあの日の言葉を一瞬たりとも忘れたことはない。
リビングのソファに座り、お風呂が沸くまでこれからのことを話した。呼び方は先程の通りお互い名前で呼び、タメ口で話す。家にいる時は好きなように呼んで、好きなように話していいと言われた。
「ほんで、夜のことやけど…したい?君がしたい言うんやったらするけど…処女やろ?」
なんで知ってるんだ、と思ったが、ずっと一緒にいたのだ、そりゃあわかるだろう。
「そういう副隊長だって、こっち来てからしてないようですけど…」
「何言うとるん、男やで?それなりにあるわ」
言わなければよかった。自分で聞いておいて傷付いてる。さっきまでドキドキしてた心臓がギシギシしてる。
しませんと言って顔を背けた。私が想っている間、この人は他の誰かをその腕に抱き締めていたんだ。苦しい、痛い…やだ。私と夫婦の間も誰かを抱くのだろうか。
「とりあえず、君が嫌なら変なことはせぇへんから。結婚しとる間は他の女も抱いたりせぇへん」
私の心の声を聞いているかのように答えをくれる。私のことは全てわかっているかのように振る舞う。そんな彼が愛しくて堪らない。
少しだけなら許されるだろうかと、ゆっくりと身体を傾けて彼に預けた。ほんまはしたいん?と聞きながら覗き込む顔を見ながらゆっくり目を閉じ、ふるふると首を振った。