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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第2章 再会


次の日、訓練校では昨日の怪獣出現の話で持ち切りだった。亜白隊長がメインウェポンで射抜いたことをみんなが口々に、憧れを滲ませながら話す。そんな彼らに私は、昨日の討伐で一番かっこよかったのは保科さんだもん…と心の中でモヤモヤする感情を呟いた。

「保科さん?誰?保科隊長のことか?」

クラスメイトの古橋伊春…伊春くんが私の声を聞き取り話しかけてくる。初めて会った時に伊春でいいよと言われた。ピンクのモヒカン頭…本当に目立つな、と思いながら私は答えた。

「ううん、保科隊長…の弟だよ」

弟いたのか!と伊春くんは感嘆としたように言っておきながら、彼の話題はすぐに亜白隊長のものへと戻った。伊春くんは中学生の時に亜白隊長に助けられてからずっと憧れているようだ。その為この訓練校…防衛隊志望の高専に通っている。

授業という名の訓練が終わっても話題は依然、亜白隊長のもの。亜白隊長がどれだけ人気かわかるだろう。もちろん私だって憧れているし尊敬だってしている。でも昨日のMVPはどう考えても保科さんだろう。防衛隊は怪獣を討伐する組織…だが根本にあるのは、市民を守る義務。討伐したのは確かに亜白隊長だ、だが市民を守ったのは保科さんなのだ。

私はこんなにも保科さんのことを思い浮かべているのに、みんなは亜白隊長だった。私の中での特別が変わっていく。この気持ちはきっと憧れ…それ以外のなにものでもないと、自身の胸に強く言い聞かせた。
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