第17章 愛縛 〜呟愛〜
「本当に…?っ、私…初めて会った時から好きで…ずっと、ずっと振り向かせたかった」
この人をずっと好きでいてよかった。そう思えた。幼い私が膨らませていった想いは、今やっと、咲くことが出来た。何度も諦めかけたけど、好きな気持ちだけはなくなることはなかった。
「僕が嘘つく思う?…通信機越しにかっこいいとかすごいとか言うてくれた君のことが、ずっと気になっとった」
異動してきた時、すぐ私だと気付いたと…あ、だから私の声が好きなの?
葬儀の時の会話を覚えてるか聞いてみると、全然覚えてないようだ。それはそれで悲しかったが、それでもいい。今、この人の心の中に私がいる。ずっと望んでいたこと。目尻から流れた涙が髪を濡らす。
「そんな泣かんといて〜初めてちゃんと泣いとるとこ見れたけど、なんや、泣かしてもうたみたいで、後味悪いわ」
目尻を舐められて擽ったくて、肩を竦めた。
「ありがとうって、嬉しいって…そんな温かい涙……宗四郎が私のこと好きになってくれて、嬉しいの」
「っ…そうか。君のおとんもおかんも、負けてへん」
え?それって…思い出したの?
宗四郎を見つめると、ニコッと微笑んだ。背中に手を回して抱き締め、何度も好きと伝える。嬉しすぎて、もう死んでもいいくらい幸せだった。
仰向けに戻る宗四郎に釣られて上に移動する。それでも腕は離さなかった。ずっと触れていたい。ずっと一緒にいたい。何があっても、もうこの手は離さない。
「澪、澪…好きや。君の全部、好きや」
肩が震えて涙がとめどなく零れる。宗四郎の胸を濡らしながら、少し早い鼓動を聞いていた。