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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第4章 指令


夜の街の中を副隊長に手を引かれながら歩く。手も顔も熱くて、心臓は今にも口から飛び出そうだった。手を繋ぐのは初めてではないけれど、夫婦というのを意識すると…とてもじゃないけど、冷静でなんていられない。

私の歩幅に合わせながら歩いてくれる副隊長の横顔を盗み見た。かっこいいな…なんでそんな平静でいられるんだろう。私ばっかり意識して恥ずかしい。

「澪ちゃん、緊張しとる?大丈夫やよ、普段通りにしとったらええ」

いつもの揶揄うような口調はどこかへ行き、優しく穏やかな声色に、余計に心臓は高鳴るばかり。

はい…と静かに返しながら俯く。こんなんじゃダメなのに…もっと夫婦らしくしなきゃ。そう思い、副隊長に身体を寄せ、繋いでいない方の手を腕に添える。鍛え抜かれた逞しい腕を隊服越しに感じた。

どんなに私が密着しても、副隊長は涼しい顔を崩さなかった。気持ちがあるわけじゃないから当たり前なのに、寂しくてしょうがない。

「可愛ええことしてくれるやん。はよ家帰りたいな」

柔らかな笑みを浮かべ、私の頭に頬を寄せた。近い…震えそう。

「さっきな、抱き締めてくれとったやろ?めっちゃ心臓の音聞こえてたで?可愛ええな思て、やらかい感触、堪能しとったわ」

やっぱり聞こえてたんだ…今そんなことを言われて余計熱くなる。
"何がある思うとるん"その言葉を思い出し、柔らかいものだと確信した。私、なんて大胆なことをしてたんだろう。
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