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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第15章 愛縛 〜涙愛〜


「なんや、偽装言うてたくせに、部屋で二人きりか」

え、誰…?
いきなり部屋に入ってきた人物に目を向ける。白髪で毛先は紫。長い髪を一つの三つ編みで束ねていた。あの目…宗四郎さんのように細い。お兄さんだろうか。

宗四郎さんは勝手に入ってくるなと怒鳴っている。不仲というのは本当なのかもしれない。

「ほんで?お前らの関係ってなんなん?」

「関係ないやろ。夫婦や言うとる……」

「偽装やろ?」

お兄さんは何を知りたいのだろう。偽装以外の関係なんてないのに…。
その後も何か言い争っているようだが、私はもうその会話を聞くことはしなかった。聞いていたとしても、何も意味はない。

ボーッとしているとお兄さんがお風呂に入ってこいと言ったので、従って部屋を出る。宗四郎さんに止められたが、無視してお風呂に向かった。

だけど…お風呂ってどこ?このまま彷徨うのいけないと思い、来た道を引き返す。すると、すぐにお兄さんが来て、案内をしてくれると言う。

「澪ちゃんやっけ?宗四郎とは偽装なんやろ?気持ちはあるか?ないんやったら…俺のもんならん?」

いきなり何を言ってるのか…。
首を振るとなんで?と聞かれる。なんでって…さっき会ったばかりの人にそう言われて、どうして頷けよう。

「私は……ずっと…何があっても…あの人を想ってます」

好きでいるくらい、許されるだろう。
お兄さんは口元を歪ませて、ふーん…と笑った。

ここや、と私を脱衣所に押し込んで、お兄さんは戻っていった。
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