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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第15章 愛縛 〜涙愛〜


ある程度、観光をしてご実家に向かう。
街を歩いていたら何人もの女性に話しかけられていて、ずっと胸が騒がしい。宗四郎さんも私と同じ思いをすればいいのに…でもどうせ、私への気持ちはないから意味はないけど。

いつの間にか指が絡んでいた手は、ご実家につくと離された。一気に冷えていく。もう一度その手を握ることは、私もしなかった。

ご両親はとてもいい方で、お兄さんもそろそろ来るそうだ。宗四郎さんは来なくていいと悪態をついていたが。

「なぁ澪ちゃん、そないな顔しとると…僕、どうしたらええん?」

そんな顔って…普通にしてるつもりだったんだけど…。
宗四郎さんの部屋で二人きりになると、いきなりベッドに押し倒されて、言い返すことも出来ず唇を奪われる。

「ん、やだ……や!」

「……どしたん?僕とちゅーしたくないん?」

したくないと顔を背けて目をぎゅっと瞑った。こんな状態でこんなことをしたくない。宗四郎さんは私の手を引いて起き上がらせる。

目の前に屈んで手を握ってくる。見つめられても、返すことは出来なかった。だって宗四郎さんは今も、あの人と会ってることは事実で、行為をしてるのも事実かもしれない。そんなの、もう信じられるはずがない。

もし、宗四郎さんが私以外を抱かないと言っていなかったのなら、信じるも何もないのだけど…。
私の気持ちももう、それを許せるくらいの軽いものじゃないの。

「澪…澪は僕の奥さんや。やから、僕の女やで?なんでそないに気にするん?」

私が気にしてるのはそんなことじゃない。
もう諦めよう。この人の心は…もう望まない。
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