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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第15章 愛縛 〜涙愛〜


「あ、あなたこそ…妻の私にそんなことを言ってどうするんです?宗四郎さんがどんな人なのか、あなたより知ってるつもりです」

この人が私たちの本当の関係を知ってるかどうかわからない。だからここはちゃんと演技しないと…。それでも、声は震えていた。

「そやな。澪ちゃんの方が僕のこと知っとるわ。何言うたか知らんけど、だいたい検討はつく。この子に関わるな言うたやろ」

突然肩を抱かれ、大好きな声が真後ろから聞こえた。
もう会議は終わったのかな。

酷く冷たい声は、ずっと一緒にいたけど、ここまで冷たいのは初めて聞いた。私の為に怒ってくれているのだろうか。それとも…この人との関係を知られたくないから?

でも、ここまで言うということは、この人は偽装のことを知らないのだろう。なら、どうして愛されてないなんて言ったの?

「澪を泣かせたら、お前でも許さん」

「宗四郎!なんで?私よりもこの子なの?あんなに気持ち良さそうにしてたじゃない。毎日……」

宗四郎さんは腕に縋り付いたアヤを引き剥がして言葉を遮り、私の手を引いてその場を離れていく。私の顔を見ることはなかった。

こんな演技はいらない。する必要ないじゃない。あの人と毎日のように会ってそういうことをしてるなら…。私の目を見ないのが答えでしょ?

掴まれた手は温かいのに、心はどこまでも冷えていく。嬉しいはずの言葉が、私の胸を突き刺す。予想はついてた。私の立場では何も言えないのが、苦しかった。
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