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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第4章 指令


「君たち2人には結婚してもらう」

開いた口が塞がらないとはこのこと…2人で隊長室に来ると、亜白隊長に突然そんなことを言われた。

「結婚と言っても、事実婚でいい。法的な契約を結ばずとも、いい効果になるだろう」

同棲はしてもらう、と言われた。どうやら、副隊長のモテすぎ問題に関係があるようだ。基地内まで侵入してくる者はあれ以来ないが、毎日のように副隊長に会いたいと基地に訪れる一般女性に加え、隊内でも業務に支障が出るようなことも起こっている。

それに、ストーカーの件もあり、副隊長を守る為に結婚して欲しい、とのことだ。それならば、断る理由などない。大切な人をこんな私でも守れるなら、どんなことだってする。

副隊長は驚いたりもせず、私が返事をするのを待っていた。

「了……ですが、一つ確認したいことがあります。その…夜は…えっと……夫婦としての、その…行為は…?」

言葉を選びながらの為、少々見苦しい喋り方になってしまった。

「それは2人に任せる。偽装を完璧にしたいのであれば、2人きりの時も夫婦として接してもらって構わない」

なるほど…しなくていいということか。副隊長もするつもりはないだろう。恐らく今も、私のことは子供だと思っているはず。

期間はいつまで、などと明確に決めているわけではなく、副隊長の周りが治まるまで、ということらしい。

だけど…どうして相手役に私が選ばれたんだろう…。

「朝霧は長年一緒にいたので信用出来る。それに、保科たっての希望だ」

へ?保科副隊長が?私を?心臓が一気に音をたてる。というか、静かだったのは副隊長もこのことを知っていたからなのか。

「ちょ、亜白隊長!そのことは伏せてくれるいう約束じゃありませんでした!?」

「あ、すまない」

いつもの涼しい表情を崩さずに、慌てる副隊長に謝る。私に知られたくない事情でもあったのだろうか?私からしたら、副隊長に信頼してもらっていると思って嬉しいのだが…。
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