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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第4章 指令


訓練校を卒業し、隊員選抜試験も無事突破。晴れて私は防衛隊第3部隊 立川基地所属になった。

あの後も保科副隊長を狙う女性たちは基地を訪ねてくる。
隊内では訓練の妨害をするかのように副隊長に擦り寄る者がいた。ある時は副隊長が入っていった仮眠室の前をうろちょろする者がいて、私が声をかけると逃げていった。
新人の隊員も入ったことで、余計騒がれるようになった。

この国を守る為に防衛隊員になったのではないのだろうか…。
少しでもいいからあの人の心を軽くしたい、守れるくらいの地位を手に入れたい。

結局、ストーカーは未だに誰かわかっていない。副隊長は隊員かもしれないと言っていた。仮眠室の前をうろちょろしている隊員かと思ったが、恐らく違う。

「あの…今日、副隊長の後をつけてっていいですか?」

訓練終わり、私の部屋に副隊長を呼んでコソコソと話しを振る。

「朝霧までストーカーなるんか!?嫌やぁ…」

ストーカーがこんな堂々と後をつける宣言をするか。
頭を両手で抱えて弱々しい声を発する副隊長に、ストーカーが誰か突き止める為ですと説得する。

「ええよ…そんなん、朝霧が危ないやん。無理せんで…気持ちはめっちゃ嬉しいで?」

せやけどあかん…と私を心配してくれる。自分が酷い状況にあってこんなに弱っているのに、訓練中やみんなの前では絶対に弱音を吐かない。そして、私のことまで気にかけてくれる。なんて優しい人なんだろう。

あの日、副隊長がしてくれたように隣に座って、優しく抱き寄せて、まだ少し汗で濡れている黒髪を撫でた。

「私が嫌なんです。副隊長をこんな風に困らせる人は許せません」

「ありがとう…でも、君がこんな風に男を抱いたらあかんで。何がある思うとるん?」

言葉の意味がわからずにどういうことですか?と問いかけると、副隊長は黙り込んだ。黒髪から覗く耳が少し赤くなっている気がした。

その時、通信機から亜白隊長の声がして、私と副隊長は隊長室に呼び出された。
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