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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第3章 重奏


お風呂に入ってから部屋で寝る準備をしていると、入り口の扉からコンコンというノック音が聞こえた。すぐに扉を開けて確認すると副隊長が立っていた。

「ちょっとええ?休まして…」

「え?いいですけど…どうしたんですか?」

今、家には帰りたくないらしく、仮眠室で一人でいるのも嫌だと言う。何かあったんだろうか…。

「ストーカーされとる言うたやろ?隊員かもしれへんねん…外出て後つけられるんも嫌やし、仮眠室覗かれるんも嫌や…」

確かにそんなことをされていれば休まる暇もないし、気を抜けなくて疲れてしまうだろう。特にあんなことがあった後だ、心もまいってしまっているのではないか。

ベッド使っていいですよ、と布団を持って寝てもらう。副隊長に近付いた瞬間、石鹸の香りがして、心臓がうるさかった。彼もお風呂に入ってきたのだろう。

「堪忍…僕がいたら休まらんやろ?今日だけや、許して…」

「大丈夫ですよ。疲れたら、いつでも頼ってください」

他の男だったら絶対に部屋には入れないが、副隊長のことは信頼している。私が嫌がることをしないと知っているから、安心して眠ることが出来る。

まあ、副隊長だからこそ、同じに部屋にいると心臓が騒がしいのだが…それでも、私を信頼していることの証のようで、快く受け入れてしまうのだ。

おやすみ…と布団から軽く顔を出して穏やかな顔で眠ろうとしている彼が、心底愛しいと思えて、抑えが効かなくなりそうだった。

「おやすみなさい…私以外、誰も来ませんから。誰かを部屋に入れることもありません」

気持ちを抑えて、出来るだけ安心させるように言葉をかけてから、私も床で毛布を掛けて眠った。
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