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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第14章 愛縛 〜抱愛〜


一人で家に帰ってきて、ご飯の準備を始めた。

そういえば小此木さん、どう思ったかな?小此木さんには偽装結婚のことを伝えてる。それなのに目の前でキスをして……先程の自身の行動に今更ながら、羞恥心が湧いてきた。

さっきは夢中だったから…宗四郎さんからしてきたから…そうやって、意味のない言い訳を心の中でした。

なんで"アヤ"と会うの?私とあんなことしてるくせに。今日、あの匂いをさせて帰ってきたら、無視してやる。香水の匂いが移るって相当な距離の近さだろう。

「……宗四郎さんの、バカ」

味気がないご飯を、寂しさを抱えながら食べた。
その後はシャワーだけで済ませて、少しリビングで休む。シャワーで少しだけ涙を流した。

一人で何度好きと呟いても、私の気持ちはどこにも行けない。ただ、空気の中に攫われるだけ。

どうして宗四郎さんは私としようとするくせに、"アヤ"に会うの?私じゃ物足りない?"アヤ"としてるの?
宗四郎さんに聞きたい言葉はずっと胸の中にある。偽装結婚をしている私には言う資格がない言葉。問い詰めることなんて出来ない。

「好きだよぉ…」

胸の中でパンパンになった気持ちを吐き出した。

今日も宗四郎さんの寝室に行き、ベッドに沈み込んだ。
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