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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第14章 愛縛 〜抱愛〜


頭を撫でられる感覚に目を覚ます。でもそのまま寝たフリをした。

「澪ちゃんただいま。かわい……」

とくんっと心臓が跳ねた。寝ている時までそんなことを言うの?あなたは一体、私をどうしたいの…そんな、甘い匂いをさせて。

気付かれないように顔を顰めた。今日もどのくらい近くにいたの?どのくらい触れ合ってきたの?
一度、浮気と疑われたのに、どうしてまだ会ってるんだろう。

寝室を出ていった彼に寂しさや苦しさを感じて、そっと涙を流した。もう、泣かせないで…。

そのまま眠れずに待っていると寝室の扉が開き、近付いてくる気配がした。シャンプーやせっけんの香りが漂ってきて、酷く安心した。私の好きな匂い。

どうやら彼は、私の目の前でしゃがんだようだ。顔にかかった髪を耳にかけられて、少し身じろいだ。耳が擽ったい…。そのまま髪を撫でられて、嬉しさと困惑でよくわからない感情になる。

「澪…僕の澪。おやすみ」

どういう気持ちで言ってるの?自分は好きじゃないけど、好きでいて欲しいってこと?そんなの…当たり前だよ。この気持ちは変わらない。

「……おかえりなさい。おやすみ」

「…起こした?」

少し焦りが滲んだ声。聞かれたくなかったのかな…。

髪を撫でる手を握って、そっと指先に口付ける。

「おやすみのちゅーはないの?」

少し恥ずかしかったが、して欲しくて聞いた。求めてくれないのかな?私はこんなに求めてるのに。

「……抱いてええ?今日はやめとく?非番の時の方がええやろか…」

両手を頭の上に投げ出して、仰向けになった。
宗四郎さんは鼻で笑い、ゆっくり覆い被さってくる。
私の心臓は痛い程、高鳴っていた。
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