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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第13章 宵闇 〜恋闇〜


「澪ちゃん、ちょお来て」

また沈黙に支配された私たちの空気に、優しくて穏やかな声が響いた。
すぐに私を呼んだ人物に駆け寄り、敬礼をする。みんなもしていた。

「ええよ。休憩中や、楽にしぃ」

手を引かれて、みんなとは車両を隔てて近くにいた。

車両に壁ドンのような形で追い詰められて、目の前に美しい瞳が姿を現す。優しく頭を撫でられて、俯き鼻を啜った。

「亜白隊長が、カフカに有利な情報をまとめた報告書を作っとる」

第3部隊はみんな、日比野さんの帰りを待っている。

その報告書でどうこう出来るかはわからない。宗四郎さんはただ、私を安心させる為に言ってくれているのはわかっていた。

肩に額を寄せて彼の隊服をぎゅっと掴む。息を詰まらせながら隊服を濡らした。胸が締め付けられてどうしようもない。本当は見せたくない涙。だけど、この人の前だと安心して流してしまう自分がいる。

頭を撫でていた宗四郎さんは少しすると、軽快な声を発した。

「ずっとそんままやと、ちゅーしてまうぞ?なんなん、なんで僕やなくてカフカのせいやのに、僕の服濡らすん?」

わしゃわしゃと頭を撫でられて、髪がボサボサになる。
揶揄うような、拗ねたような彼の声は、私の心を軽くしてくれた。それと同時に、彼の中で私はなんなのだろうという疑問が大きくなっていく。

泣き顔を見せたくないのに無理やり上を向かせられて、深いキスをされた。
頬に残っていた跡は、宗四郎さんの指でどこかに行ってしまった。
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