第13章 宵闇 〜恋闇〜
「澪ちゃん、おいで」
本部の人が帰って少しだけ、自由に出来る時間をもらった。
私と宗四郎さんは瓦礫の中、みんなから少し離れて何かを話すことなく、2人でいた。
宗四郎さんが沈黙を破り、手を引いて自身の腕の中に私を閉じ込める。
温かい…溢れてきそうになる涙を必死で堪えた。泣いている場合じゃないから。ボロボロになった基地の復興、日比野さんのこれから、強くなる為の訓練、やることがいっぱいだ。
「僕が隠しといたるから、我慢せんくてええで」
それなのに、彼の優しさが沁みる。
ぎゅう…と力強く、でも優しく抱き締められて、ほんの少し宗四郎さんの隊服を濡らした。
すぐに涙を拭いて顔を上げる。目の前にある宗四郎さんの顔が優しげに微笑んでいた。
どうして、こんなに優しくしてくれるの…?普通の部下ではない距離。それは、私を温かくさせると同時に不安の渦に飲み込んでいく。
そんな不安を拭い去りたくて、そっと唇を重ねた。唇の隙間に滑り込んできた舌が、少しだけ私の舌と触れ合って離れていく。
みんなが近くにいるのに、何してるんだろう。演技を見せる為だとしても、今見せるべきではない。わかっているのに、安心したかった。
日比野さんや基地、宗四郎さんの気持ち…いろんな不安がぐちゃぐちゃに混ざって、これからが怖かった。怪獣9号もまた現れるかもしれない。最近、いろんなことが起きすぎている。
「…口に出したら、楽になることもあるで。宗四郎としても、副隊長としても、全部受け止めたるから。抱えたらあかん」
「……ありがとう。私…日比野さんを助けたい。私じゃどうすることも出来ないと思うけど、助けてくれた日比野さんを助けたい」
もう少し、この気持ちは抱えておくから…他のことは、一緒に抱えてくれると嬉しいな。
私の頬を撫でた宗四郎さんは、着替えてきと私の背中を押した。