第13章 宵闇 〜恋闇〜
スーツを着て基本銃を持ち、外へと向かう。
建物の入り口から移送車両までの道を隊員たちで囲んだ。
開いた扉から、亜白隊長、宗四郎さん、そして…拘束された日比野さんが出てくる。その後ろには2名の隊員。
日比野さんはどうなるのだろう。助けることは出来ないのだろうか…日比野さんが私たちを助けてくれたように。
今ここで泣くことは許されない。それに、まだどうなるか決まったわけではないのだ。日比野さんは怪獣じゃないと、私たちはそう思っている。
亜白隊長と日比野さんが車両に乗り込んでいく。
「先輩!」
市川くんの声が響いた。彼はすぐに前に出て、日比野さんと向き合う。
「戻ってくるって、信じてますから!」
はっきりとそう言った市川くんがかっこいいと思った。この場面で前に出て言葉を発する。本部の人もいる、この場で。
私も何か声をかけたかったが、車両の扉は虚しく閉じられた。
胸が張り裂けそうだ。
入隊してからずっと日比野さんの努力を見てきた。一緒に厳しい訓練に耐えてきた。
命を預け合える仲間だから。
少しすると日比野さんを乗せた車両が動き出す。
「第3部隊、敬礼!」
目を逸らすことなく見つめていると、宗四郎さんの低い声が響く。
すぐに私たち第3部隊は、その車両に向けて敬礼をした。
日比野さん、助けてくれてありがとう。ずっと待ってます。
「保科副隊長、どういうつもりだ?」
本部の伊丹副長官が宗四郎さんに声をかける。
「上官の、亜白隊長に対してです」
敬礼を解くことなく、答える宗四郎さん。
「そうだな。怪獣に敬礼など、あってはならんことだ」
日比野さんは怪獣じゃない。
私たち第3部隊は、日比野さんにずっと敬礼をしていた。