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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第13章 宵闇 〜恋闇〜


くるくると包帯を巻いていく。やっぱり、いつまで経ってもこの人と距離が近いのは慣れない。手が震えて、包帯を落としてしまわないか、心配だ。

名前を呼ばれて顔を上げると、あまりの近さに心臓が止まりそうになる。
キスとかも何度もしてるのに、意識してしまう。日本人顔ですごく綺麗な顔。こんなの、イケメンとしか言いようがないだろう。

私、こんなかっこいい人といろんなことしてるんだな…と昨日のことや先程のことが蘇り、あ…と零しながら目を逸らすことさえ許されないような、そんな心境になる。

「どしたん?見惚れとるの?ふふ…可愛ええね」

自分の顔がいいことを自覚しているから、これは揶揄いでもなんでもないことがわかる。ただただ甘い雰囲気が流れていく。

薄く覗いた八重歯に目が引き込まれた。

「はよせぇへんと、遅れてまうで?カフカの移送がある」

その言葉で一気に現実に引き戻された。
日比野さん…怪獣8号。私たちを…第3部隊を救ってくれた人物。あの人の為に今、私は何が出来るんだろう。

俯きながら包帯を巻き終えて、テープで止める。
手は別の意味で震えていた。
仲間を失うかもしれない恐怖。

「澪ちゃん、ありがとう。大丈夫や、きっと大丈夫やから…」

優しく抱き締めてくれた彼の胸が温かくて、涙が出そうになった。
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