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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第3章 重奏


基地内が慌ただしくなり、隊員たちが帰ってくるのを空気感から感じた。それと同時に通信機から小此木さんの声が聞こえてくる。

「澪ちゃん、亜白隊長と保科副隊長はもう少し現場を見てから帰ってくるみたいだから、帰ってくるまでその女性をお願い出来るかな?」

「了」

現場検証を行うということは何かイレギュラーがあったのかもしれない。私が出来ることはここで帰りを待ち、2人が安心して責務を全う出来るようにすること。幸い私は長年ここにいるので亜白隊長の信頼がある。保科副隊長も再会してから信頼を築き上げてきた。

応接室の静寂は外の慌ただしさとは対照的で、ただ私は扉を背に静かにしている女性を見続けている。暴れ出したり、逃げ出したりしないか、少し心配だ。しかし、私がしっかりここを抑えて置かなければ……私が最も信頼している2人、その2人に基地内の安全を任せられているのだから。

怪獣討伐を終えて廊下を歩く隊員たちの足音が聞こえる。会話が断片的に聞こえて、やはり何かあったようだ。"なんだったんだろうな""結局怪獣は倒したのは誰なんだ?"という声が聞こえてくる。

討伐者不明…?一体、何があったんだろう…。

だが今の私にはその情報はいらない。副隊長の訓練で教えてもらった、標的の動きをよく見る。それだけに集中しなければ…一般人相手とはいえ、基地の警備を掻い潜ってきたのだ、油断は出来ない。

静寂が応接室を包む中、私はただジッと2人の帰りを待っていた。
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