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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第3章 重奏


「どうしてこんなことをするんですか?好きなら困らせたくないでしょう…」

「あなた、誰よ…出動してないってことは、隊員じゃないんでしょ」

答える義務はない。話題を変え、ストーカーをしているのはあなたかと問う。そんなことを聞いたって、はい、と答えるはずがないのだが…。

基地の敷地内に侵入してきたのは、この女性が初めてだ。今まで訪ねてくることはあったが、侵入までしてくることはなかった。

時折、頬に流れてくる血を拭いながら、扉の前に立って女性から目を離さずにいた。爪でここまで深く切られるとは…。

私よりも少し歳上に見える女性は、副隊長の前とは違って静かにしている。

「…副隊長のどこが好きなんですか?」

自分でも何故そんな質問をしたのかわからなかった。ただ、確かめたかったのかもしれない。彼への想いの深さは私の方が上だと…。

「なんでそんなこと……顔に決まってるじゃない。そして副隊長という肩書き…誰だって欲しいでしょ?」

あの人の良いところは顔だけじゃない、彼の良いところも悪いところも知っている私は、密かに心の中で優越感に浸っていた。

再び静まり返る応接室で、戦士たちの帰りを待っていた。
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