第13章 宵闇 〜恋闇〜
なんとか手を洗い終えて、未だに胸を触り続ける宗四郎さんの頬目掛けて手を上げる。
「なっ!…冷たっ!」
「触りすぎだよ…もう寝よう?」
頬を濡れた手で挟んでむにゅむにゅと捏ね回す。許してやぁ…と脇腹を擽ってくるので、身体を捩ると足を踏んでしまった。痛っ!という彼の声を聞いて謝るが、私は悪くない。
なんとか彼の手から抜け出し、宗四郎さんの寝室へと走る。シーツを取ってまた洗面所に戻った。濡らしてしまったから洗わないと…。
「澪ちゃん…今日、澪ちゃんの布団で寝てええ?」
洗濯機のスイッチを押すと後ろからお腹に手を回されて、ぎゅうと抱き締められた。肩に顎を乗せて、甘えてくる。身体的な距離なんて、もうほぼない。ドキドキして息が荒くなる。
やっぱり…よくわからないよ。宗四郎さんの気持ちを知りたい。
頷いて返すと、可愛ええ〜と頬を擦り寄せてきた。どこに可愛さがあったと言うのか…。
「ずっと真っ赤で、僕のことほんまに好きなんやなてわかる」
私はわからない。宗四郎さんは私のこと、どう思ってるの?大事にしてれるだけでこんなことをされるのは、私は苦しいよ…。
「……身体、痛くないの…?」
恥ずかしいのと苦しいのに支配されそうで、話を逸らした。
「ん〜?痛いで?やけど、澪ちゃん揶揄う方が先や」
揶揄う…宗四郎さんにとってはずっと揶揄う為にしていることなの?さっきのあの行為もそうなの?
聞きたくても聞けない。そうだと言われるのが怖いから。
寝よかと洗面所から私の手を引いて出ていく。
私以外を見ないで欲しいな…。