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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第13章 宵闇 〜恋闇〜


「ははっ!澪ちゃんあかんわぁ、あはははっ……いっ、たあ!!」

「すみませんね、わざとです」

宗四郎さんの怪我に薬を塗っていると、擽ったいと身体を震わせて笑うので塗りにくくて、わざと少し強く指を押し付けた。本当に少しだけ。なのに痛がる彼を見て、内心では本当に申し訳なく思っている。

「覚えとってな!!後で仕返ししたるから!」

誤りながら薬を指に取って、他のところに塗っていく。また笑いを零しながら擽ったがる宗四郎さん。

「ちょっと、うるさい」

宗四郎さんが何か言う前に唇を奪い、舌を絡めながら薬を塗る。口は静かになっても、身体がぷるぷると震えて擽ったいと訴えている。

意外と弱いんだ…擽られるの。今は擽ってるつもりないけど。

銀糸を引きながら熱い舌を離していく。

「……自分からしといて、そんな蕩けんといてや。犯したなる」

薄目でボーッと彼の八重歯を見つめていた。いつの間にか薬を塗る手は止まっていて、心臓がドクンドクンと大きな音を立てている。

違うの…途中から宗四郎さんに主導権を握られたからこうなってるの。

熱くなった頬を宗四郎さんの少し冷えた指で撫でられて、気持ち良くて擦り寄った。

「もっかいする?心臓なくならん程度にな」

意地悪な笑みを浮かべる彼を睨んだ。

「……もうなくなりそう」

クスクス笑う宗四郎さんの身体に薬を塗り終えて、包帯を巻いていく。

「っ、ふっ…澪ちゃんわざとやろ……その手、擽ったくて堪らんわぁ」

微かに触れる指に宗四郎さんはピクピクと反応している。
わざと…というか、痛くしないように慎重にやっていると、こうなってしまう。

包帯を背中に回す度に抱きつき形になってドキドキする。そんなこともきっとバレていて、宗四郎さんはそれを楽しんでいるのだろう。
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