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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第3章 重奏


けたたましい警報音が鳴り響く。怪獣発生を知らせる警報だ。

副隊長はすぐに準備をしなければならない。医務室へと向けた足をすぐに戻し、女性を副隊長から離そうと腕を取る。

無闇に女性に触れない副隊長は腕を引き剥がそうとしているが、あまり強くは振り払えないようだ。鍛え上げられた男性の力で力強く振り払えられれば、一般人の女性など、怪我をしてしまうだろう。

「公務執行妨害や、僕らの仕事をなんやと思うとる。今、こうしとる間にも、負傷者が出とるかもしれへん」

通信機から副隊長を呼ぶオペレーターの小此木さんの声が聞こえる。私は慌てて状況を説明し、女性を後ろから腕ごと抱き締める形で取り押さえた。

「副隊長、行ってください!」

副隊長は装備の準備に加え、作戦を立てる場にもいなければいけない。今ここで女性の対応を出来るのは私だけ。

実は最近よく女性が保科副隊長を訪ねて基地へと来る。私生活でもつけられたりしているらしく、副隊長となった彼には過激なファンも増えた。

「朝霧、頼んだ」

背中越しにちらっとこちらを向いて鋭く光らせた柘榴石のような瞳に射抜かれる。そんな副隊長の背中を見送って、とりあえず女性を応接室へ連れていく。

このまま帰していいかの判断も私には出来ない。それに怪獣が発生している外に出すわけにもいかない。これは、ここを任された私の責務。
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