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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第3章 重奏


訓練校に通いながら立川基地で過ごす日々。そろそろ訓練校も卒業の時期だ。私はもう子供ではなくなった。お酒だってそろそろ飲める。

ほぼ毎日、保科さんとは顔を合わせ、揶揄われる。保科さんはずっと私のことを子供扱い、私があの日言った言葉で口に出すことはなくなったけど、行動の節々に感じる。

そんな時だった。あの事件が起きたのは…。

「ここは防衛隊第3部隊、立川基地です。関係者以外は基本立ち入り禁止となっております」

見知らぬ女性が警備を掻い潜って、いきなり基地内に侵入してきた。たまたまその女性が隊員ではないとすぐに気付いた私たちがその女性に声をかけるが、女性は無視して訓練中の隊員たちの中に入っていった。

「保科副隊長ですよね?やっぱ本物かっこいい…」

副隊長となった彼の腕にしがみつき、困惑する彼に構わず自身のことをペラペラと喋り捲し立てる。

「誰です?一般人は立ち入り禁止ですよ?」

「副隊長!すみません、すぐに連れ出します!」

慌てて駆け寄り女性を引き剥がす。訓練の邪魔になっている。

基地外に連れ出そうと女性を引っ張るが、鮮やかな爪に頬を引っ掻かれて思わず手を離してしまった。

「朝霧!大丈夫か!?」

頬を押さえながら、慌てる副隊長にはい…と答える。またしがみついた女性を気にもとめず、頬を押さえた私の手をそっと取り、顔を覗き込んできた。

「血ぃ出とる…跡残ったらどうしてくれんねん!」

女性は僕がなんとかするから手当てをして来いと言われ、医務室に向かおうとした時だった。
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