第13章 宵闇 〜恋闇〜
『江戸の世ならお前は天才と崇められただろう。だがもう、刀の時代ではないんや。わかるな、宗四郎。防衛隊は諦めろ』
ガキん頃、おとんに言われた言葉が頭の中で反芻する。
小此木ちゃんと澪ちゃんが必死に僕を呼ぶ声が聞こえた。
ここで寝とる場合やない。もう、泣かせたないんや。なんでそう思うんかわからん……いや、気付いとるけど、まだ認めるわけにはいかん。まだ僕にそんな資格はない、また泣かせてまう。
心配させないように笑って、軽く言葉を紡ぐ。
泣いてないか心配になって、顔を覗き込んだ。眉を下げて僕を見上げているが、泣いてはいなかった。
澪ちゃんの肩を借りて、痛む身体を無理やり動かす。
全開放も解けてしもた。ここからどうする…何が出来る?
血を垂らしながら歩を進め、小此木ちゃんに外の状況を確認する。
「間もなく住民の避難は完了します。対余獣の戦況も、好転し始めています」
暴れ回る怪獣が僕の姿を捉えた。俯いていた顔を上げる。
「そうか、安心した。ほな僕も…最後まで務めを果たさんとな」
「けど戦える身体じゃ…!」
小此木ちゃんが心配してくれとるのはわかる。澪ちゃんが隣で僕に心配だと目線を向けているのもわかっとる。
せやけど、僕はやらなあかん。副隊長やから…いつも独りで泣いとるこの子を守りたいから。
拳が振り落とされる瞬間、澪ちゃんを突き飛ばし、高く跳んだ。