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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第13章 宵闇 〜恋闇〜


演習場の方から凄まじい戦闘音が聞こえてくる。宗四郎さんはそんな音は出ないはずだから、本獣の攻撃だろう。大丈夫かな…いや、宗四郎さんなら大丈夫。

空から飛んでくる余獣の羽を拳銃で穴を空け撃ち落とす。すぐさまナイフで突き刺した。

どうしても気になって、演習場が見える位置へ行くと、本獣は最初見た時から比べ物にならないくらい、大きくなっていた。
あんなの…宗四郎さんが相手をするには……宗四郎さんは小型〜中型専門。

「宗四郎さん…」

行きたい…でも私は余獣との戦闘を命令されている。命令違反したら……でも、ごめんなさい。

地を蹴って演習場へと向かった。

演習場に来ると、本獣の背後の建物から飛び降り攻撃をしようとしている宗四郎さんの姿があった。
だけど、その身体は本獣の拳によって、凄まじい音を立てながら遠くに飛ばされていく。

「え…ど……宗四郎さんっ!!」

すぐに彼を追いかけていった。
壁に穴が空いた建物を通り過ぎていく。どこまで飛ばされたの?

無事だろうか…大きな怪我はしてないだろうか。いや、あんな攻撃を受けたんだ。軽傷で済むはずがない。

頭に"死"という絶望が過ぎる。宗四郎さんに限ってそんなことはない。そう信じていたかった。

宗四郎さんの元にやっと辿り着くと、彼はひび割れた壁を背に座り込んで、俯いている。ピクリとも動かない。

やだ…ダメ…!

「そっ…副隊長!副隊長!!……守る。死んでも守る」

宗四郎さんを背に本獣の動きを目で追った。
絶対にこの人には近付けさせない。

「大丈夫、生きとんで〜」

目線を後ろに向けるといつもの調子で、人差し指と親指を立てて顔の横に上げていた。お調子者…。

「いててて…シールド全開張ったのに、シャレにならんで、あの怪獣」

壁に背を預けながら立ち上がる彼に駆け寄る。
肩を貸すと、顔を覗き込まれた。

「……よかった、泣かせてへん」

頭や鼻、口から血が滴り落ちる。オーバーヒートをしてる。

「…泣きませんよ」

笑って見せた。

私の肩を掴んだまま宗四郎さんは、怪獣に向かっていった。
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