第13章 宵闇 〜恋闇〜
「すまん小此木ちゃん。緊急につき、申請省略や。この演習場なら本気出しても、隊員巻き込む心配ないやろ」
『戦力全開放92%』
怪獣の顔の裂け目が先程よりも開かれ、その中で青い目が動く。
「ほな、怪獣討伐始めよか」
スーツが僕の力に応えていく。
あの子も…この基地も、僕が守る。
非番だった部下たちも現着した。部隊の編成も、倉庫地区の確保も…部下たちが頑張っとるようや。他はみんなに任せる。僕はこいつだけに集中出来る。
「喧嘩売る相手、間違うたな。この戦い、僕らが勝つで」
怪獣と睨み合ってから、お互いがお互いに向かって走り出す。
怪獣の攻撃を躱しながら、甲殻の隙間を正確に斬り裂いて傷を付けていった。
狙いがわかれば簡単に対処出来ると隙間を埋めた怪獣の胸に、十字の斬り傷を付けた。
「保科流刀伐術2式、交差討ち」
僕はこいつと戦って守る――せやから……君は余獣と戦って、僕を守って。
「4式っ…」
向かってきた怪獣の腕を斬り落とす。
「乱討ち!」
上半身に乱れるように幾つもの斬り傷をつける。首は薄皮一枚で繋がり、頭をぷらぷらとさせていた。
「あぁ、やっぱ戦いはこうじゃねぇとなぁ」
切断部分の肉が蠢き、再生していく。すぐに元に戻っていく、腕や首。
飛んでくる拳を躱しながら、刀を振り続けた。
腕を何等分にもし、背中についた刀傷は核を露わにした。
傾いた電柱の上に乗り、核に狙いを定める。
「意外と小さいんやなぁ、核は」
6式――八重討ち
核を中心に十字交差に斬り裂き、8等分にした。
倒した……と思った。目の前の怪獣の気配が大きくなり、禍々しくなっていく。
僕の目の前で怪獣は膨れ上がっていった。
すまん、泣かしてまうかも。