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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第13章 宵闇 〜恋闇〜


「澪…」

「ひっ!」

演技中、たまに耳元で名前を呼び捨てで囁かれるようになった。宗四郎さんは私の反応を楽しんでいるようだ。耳を押さえて顔を熱くした私を見てケラケラ笑っている。

と言っても今は誰もいなくて、真夜中の執務室でイチャイチャしていた。もちろんこれは演技だ。それでもその笑顔だけは本物だとわかる。

「澪ちゃん、トレーニングルーム連れてってくれん?」

両腕を広げて椅子に座る宗四郎さんの膝の間に立つ私に、抱っこをしろとアピールしている。

「いや、無理だよ…だって宗四郎さん重いもん…」

「なんやて!僕の体脂肪率何%やと思うとる!」

いや、そういう問題ではない。その筋肉が重いと言っているのだ。

はよ連れてけ〜と飛びつかれて、支え切れずに倒れた。頭はしっかり手で守られていた。

心臓がバクバクいってる。心臓が幾つあっても足りないからやめてください…。

「澪…僕の澪」

「もうやめて〜…そんな呼ばれなくてもわかってるから…」

耳元で甘く囁かれておかしくなりそうだった。心臓やばいなとケラケラと笑って胸に耳をつけ始める。トレーニングルームに行くんじゃなかったのか…。

周りに人はいないのに甘すぎる彼に翻弄されて、何もかもどうでもよくなりそうだった。
どうして、2人きりなのにこんなことするの?
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