第12章 宵闇 〜酔闇〜
今、行かないと本当に離れてしまう気がして、慌ててベッドから降りる。達した余韻が腰に響いた。足に力が入らないけど、勝手に進んでいく。
あの人の背中はすぐそこにあって欲しいの。離れていって欲しくないの。
「宗四郎さん!待って…!」
胸の奥の熱がその言葉に乗る。
愛しているの、どうしようもなくあなたのことを…。
小走りで廊下を進みリビングの扉を開けると、ソファに腰掛ける愛しい背中が目に入った。
すぐに駆け寄ってその背中に抱きついた。
「嫌じゃない…もう怖くない。偽装結婚の相手に他の人を選ばないで…私を選んで……嬉しかったの、あの時、宗四郎さんが私を選んでくれたって知って…」
何も答えない彼に私はそのまま続ける。
「葬儀の時からあなたを見てた。自覚したのは、通信機で言葉を交わした時の、宗四郎さんが戦う姿…」
顔を上げた宗四郎さんは優しく頬に口付けた。温かい唇が私を安心させていく。
宗四郎さんは何も言葉を発することなく、頭をこてんと私に寄せた。
あぁ…受け入れてくれるんだ。私の積み重ねてきた気持ちを。
「……君と偽装結婚をやめたら、もう誰も選ばんつもりやった。君以上に信頼出来る子なんておらんやん?」
続けよか、と優しい声がリビングに響いた。
宗四郎さんの私を大事に思う気持ちが"愛"に変わるまで、私はいつまでも待ち続ける。胸の奥できゅう…と痛むくらい、彼を想いながら。