• テキストサイズ

偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第11章 宵闇 〜慰闇〜


目が覚めると白い天井が目に入り、消毒の匂いが鼻を掠めた。
ここは…医療棟?

「目ぇ覚めたか?君らが回復したら、慰労会開くそうやで」

はよ治し、と優しく微笑む副隊長。
ずっと傍にいてくれたのかな…ぽかぽかと胸が温まっていく。

2週間程で退院出来ると言われ、少し安堵した。彼の家に帰れない今、入院出来るのはとても楽に感じられた。

「伊春くんや市川くんたちも……」

頷いた副隊長を見て、2人は無事なんだと思い安心する。よかった…。

安堵に浸っているといきなり病衣を脱がされ、包帯を取られる。恥ずかしくて顔が熱くなっていく。

「まだ恥ずかしいんか?いっつも顔赤くするん、ほんまおもろいわ…」

微かに副隊長の口元が緩んでいる気がした。

傷口を隠しているガーゼを剥がして、新しい物を貼っていく。

「痛かったやろ…」

少し眉を寄せて包帯を巻いてくれた。

鼓動は治まらないのに、優しさに安心する。

「……副隊長は、大丈夫ですか?」

「ん?僕は傷一つあらへんで。見るか?」

隊服のファスナーを下ろして脱ごうとする副隊長を慌てて止めた。今見たら、鼻からも血が出そう…。

副隊長が怪我するわけないよね。強いもん。

「慰労会で苦いビール飲み。酔っ払ったら僕が世話したる」

あんま動かんようにな、と言葉を残して、副隊長は病室を出ていった。
いきなり病室がシーン…となり、寂しくなる。

私たちの初任務はどうやら、成功に終わったようだ。
/ 409ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp