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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第10章 宵闇 〜初闇〜


路地裏まで来ると8号は歩みを緩めた。
副隊長も8号を探している。だがここで報告をすることは出来なかった。私が後をつけていることが8号にバレてしまう。
戦闘を避けて、どうにか報告出来ないだろうか…。

そんなことを考えていると、黒髪を揺らした人物が8号の目の前に現れる。

「こちら保科。地区フォックストロットにて、怪獣8号とコンタクト」

副隊長が8号と戦闘を始めようとしている。

次の瞬間、副隊長が人とは思えない身のこなしで、8号を追い詰めていった。

路地裏から出ると副隊長はリミッターの解除申請をしているようだ。
すみません、私がいるから出来ないと思います。

私は慌てて2人から距離を取った。
シールドを全開にして、少し離れた建物の上に乗る。

全開放をした副隊長の動きは目で追えない。
胸がどうしようもなく高鳴って惹かれると同時に、憧れが膨れ上がっていく。

気付けば副隊長は見えない2本の刃を8号に向かって飛ばし、次の瞬間、一気に距離を詰めた。
逆手に持った刀が紫のネオンを引き、8号の胸目掛けて一気に斬り裂く。

いけた、と思った。そこに核があるのは確認済み。
だが、2人の動きが止まる。何をしているんだろう。ここからではよく見えない。

怪獣8号が拳を振り翳した。私は頭で考える前に身体が動き飛び出していた。
あの人を失うかもしれない、そう思ってしまった。

「副隊長っ!」

「は?」

必死に手を伸ばすが、8号が拳を振り落としたのは、胸に刺さったままの副隊長の刀だった。

衝撃を受けた刀が副隊長の手から離れて、耳障りな音をたてて高く跳ね上がった。

「いっ…!」

怪我をしている腹部に手を回され抱えられる。8号との距離を取ると、気付けば8号の姿はなかった。

「報告。怪獣8号、逃亡」

副隊長は悔しそうに目元を押さえ上を向く。
私がその顔をさせた。私が邪魔をしたから8号を逃がしてしまった。

でも、本当に8号は敵なのだろうか…?
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