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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第10章 宵闇 〜初闇〜


勇ましい雄叫びを上げながら市川くんは連射し、怪獣へと駆けていく。
だが気付けば、市川くんの攻撃は1発も当たっておらず、余獣の死骸を壁とし攻撃を防いだ人型怪獣の姿があった。

「あー、その様子だとこれで、万策尽キた感じかな」

やばい…直感でそう思った。
飛んでくる攻撃をものともせず、市川くんへ向かっていく。

「市川くん!」

市川くんへと向けられる指先に狙いを定めながら拳銃を構える。だがさすがにそんな小さな的に当たるはずもなく…ナイフを構えて怪獣のと距離を縮めていった。

守らなきゃ…恐怖や焦りが頭を支配する。腕や肩、頬を掠める攻撃で出来た傷が痛む。心臓への攻撃は意識して躱した。

顔に向けられた攻撃を腕で軌道をずらしながら怪獣の元へ辿り着き、ナイフを突き刺す。
けど…ナイフが届く前に腹部を撃たれ、動けなくなった。

撃たれた箇所を押さえながらしゃがみ込む。

「朝霧!大丈夫か!?」

こちらに来ようとする伊春くんを止め、目の前で蜂の巣にされていく市川くんを見て絶望した。

私の力じゃ、仲間を守れない。なんて弱いんだろう。やっぱり私は弱いままなんだ。

いや…守る方法はある。

痛みを無視して市川くんに覆い被さった。背中が焼けるように熱い。痛みで意識が薄れていく。

撃たれながらもなんとか止血をして傷口を塞いでいく。

「宗四郎さん…私は負けない…」

ここで市川くんを失ったら、この初任務が成功したとしても、私は一生悔やみ続けるだろう。また守れなかったと顔を歪ませて、負けてないと意地を張るのだろう。あの幼い頃のように…。

怪獣は市川くんを庇う私を意味がわからないと言いながら撃つのやめ、気配が遠ざかっていく。
ダメ、そっちは……伊春くん!

痛み身体を無理やり起こして伊春くんの方へ向かおうとした。

「死ぬのはテメーだクソ野郎」

なんとなく聞き覚えがある声が響いた。
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