第10章 宵闇 〜初闇〜
私は伊春くんや市川くんと共に、地区F・斑鳩小隊に配属された。
保科小隊じゃなくてよかった。もし今、彼の傍にいたら、任務に支障をきたしてしまうかもしれない。
足元は少しふらつくが、きっと大丈夫。今は副隊長のことは考えない。防衛隊員の私にはやるべきことがある。
「作戦を伝える」
耳に付けている通信機から副隊長の声がした。
初任務の本獣はビルをなぎ倒してしまう程の大きさ。150m超えのキノコのようなあれはどう見ても、亜白隊長向きの怪獣だ。
本獣は亜白小隊が担当する。私たちはこの討伐区域から余獣を出すことなく処理すること。無数に生み出されている余獣を倒し続けなければいけない。
達成不達成で被害の大きさや復興にかかる費用、期間が大きく左右される。
「もちろん新人を含む小隊は、最後尾での配置になるが――言い換えれば…君らが最後の砦。ということや」
拳をぎゅっと握った。
何がなんでも押さえなければ…。
「訓練場で幾らいい成績を出しても、命は一つも救われない。戦場で力を示してみせろ、ヒヨコ共!」
副隊長の言葉が深く胸に刺さる。
もし…もし何かここで成し遂げられたら、私は…少しでも彼に近付けるだろうか。
伊春くんの雄叫びを聞いて、私も拳を突き上げた。
私は負けられない。両親は最後まで戦い続けた。
これからも防衛隊員として、彼の妻として在り続けたい。
だからここで…力を示す。