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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第3章 重奏


基地に戻ると一度、隊長室まで行き、亜白隊長にスルメを渡してから休憩室へと向かう。保科さんの足取りは軽い。若干スキップしているようにも見える。

そんなにモンブラン好きなんだ…と思いながらも、彼のことをまた一つ知れた喜びに胸を踊らせる。保科さんは『刀』と『モンブラン』が好きと…まるでメモを取るように心の中で繰り返す。

休憩室につくと、流れるような動きでソファに座り、テーブルにモンブランが入った箱を置く。そして箱からモンブランを取り出し、先に私に差し出してくれる保科さんの優しさ。

どんなに好きなものでも、私のことを思い遣ってくれるんだ…そんな小さな優しさにさえ、好きが増えていく。

周りには思い思いに過ごす隊員たちがいる。

「知っとるか?モンブランってな、刀なんや」

「は?」

保科さんの意味のわからない言葉に、思わず失礼な反応をしてしまった。

自身の目の前にモンブランを取り出した彼はフォークをモンブランに刺し込んでいく。

「刀と同じでな、芯の通っとる甘さなんやで?」

頭が混乱していく。保科さん、あなたは何を言っているのですか。

モンブランが乗っかったフォークを口に運んで、味わうように開いていた目を閉じて恍惚とした表情を浮かべる。

「ほら…外はやらかいクリームやけど、中は硬めなんや。ベースになっとる焼いたメレンゲも硬くてな……刀の理想型や思わん?」

保科さんを見つめたまま少しずつ顔が傾いていく。この人は先程から何を言ってるんだろう。周りの隊員たちも彼の言葉に反応し、呆気にとられている。

「モンブランはもう刀やろ?やから僕はモンブランが好きなんや」

饒舌に語る彼の言葉に耳を傾けるが、何一つ理解は出来なかった。

休憩室が数秒の沈黙に包まれる。
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