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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第9章 仮契 〜忍契〜


「……なぁ、自分から誘ったやん。ええ言うてたやん。なんでそんな変わるん?僕いつも、君に触られる度に我慢してんねんけど」

わかっとるよなと低く地を這うような声が、離れた唇から発せられてる。いつもの優しさを含んだ雰囲気は、今はない。

瞳には怒りが滲んでいた。

「僕、結構君の為に我慢しとる思うんやけど。君が他の女と遊んで欲しくなさそうやったから、毎日アヤの誘いを断っとる。僕やって、尽くしてるで」

声を荒らげることはないけど、確かに怒っている。その副隊長の雰囲気に、余計に恐怖が増していく。嬉しいはずの言葉が私の心を突き刺す。

私を拘束していた手が離れていき、腰に跨ったまま俯く彼。

「……もうやめようや。僕が亜白隊長に話しとく。別の子選ぶわ」

私の心はどこまでも深く落ちていった。何も言葉にすることは出来なかった。

私の上から退いた副隊長は、はよ寝に行けと私を突き放した。自分が悪いのはわかっているのに、怖いと思うのに…離れたくないと思ってしまう。

扉を閉める時、蚊の鳴くような声でごめんなさいと呟く。
そのまま自身の部屋へと逃げた。
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