第9章 仮契 〜忍契〜
気付けば彼は私ごと倒れて、押し倒された形になった。
「……僕に、大人にして欲しい?」
ふるふると首を振ると顔を近付けてきて、耳元でほんまに?と囁かれた。
耳の穴に舌が入ってきて、水音が頭の中に響く。その感覚に肩を竦めて甘い声を漏らした。
「澪ちゃんが耳弱いんは知っとる……僕に触って欲しいんやないの?僕がええんやないの?」
跡をつけたことを後悔した。彼の中に燻る熱に火をつけてしまったようだ。
肩に置いた手がぷるぷる震えている。確かに怖さはある。でも、この人の手に溺れてしまいたいとさえ思っていた。
「……宗四郎さんが、いい…」
「ん、なら…僕に全部預けて」
この人が誰のところにも行かないと言うのなら、このまま……。
耳元で囁かれて、耳を舐められて、身体がビクビクと震えた。
私たちはこのまま熱に溺れていく___