第9章 仮契 〜忍契〜
「……先にシャワー浴びて。浸かりたいなら沸かすから。早くその隊服を洗濯機に入れて…!」
嫉妬や独占欲がどんどん顔を出してくる。
副隊長はそんな私に驚いて、どうしたん?と聞いてきた。
「匂い……香水の匂い、やだ…」
「え…そんなしとる?アヤの?」
そうだよ!とグッと肩を押して離れた。謝ってくるが、離すつもりはないようだ。腰に回った手に力を入れているのがわかる。
「…怒らないんですか」
肩を押したまま聞くと、何が?と首を傾げて聞き返された。
「跡、つけたことです」
「なんで?僕やってつけとるし」
それでも、跡なんてつけてたら他の人と出来ないだろう。それを言うと忘れたん?と笑われた。今度は私が首を傾げる番だった。
「誰ともしやん言うたやろ?僕がゆっくり君を大人にしたるて…」
それって…"アヤ"とはしてないってこと?毎日帰りが遅いのに?今日は少し帰ってくるのが早かった。私があの時、手を振り払って逃げたからだろうか。